愛媛大学ミュージアムで「聖地へのあこがれ展」が始まりました【8月1日(月)から】
最新の研究成果とセンター所蔵の貴重な資料を公開する展覧会を開催します。現在のところ、開館していますが、最新情報は、愛媛大学ミュージアムホームページで確認ください。
【会期】令和4年8月1日(月)~令和5年4月1日(土)日曜日・年末年始休館、無料
展示1 研究最前線
①新型コロナウィルス感染症拡大以降における四国遍路の巡礼(井口梓・渡邉洋心)
②お接待所坂本屋が担う地域的な役割(兼子純・石黒聡士・西岡寧々・堀江貫太・須藤恵・松崎竜大)
③明治期の四国新道計画と四国遍路(中川未来)
④ホワイトホール・セノタフ:第一次世界大戦の遺族の「巡礼」(吉田正広)
⑤「ロンドン部隊記念碑」と市民的愛国心(吉田正広)
展示2 「聖地へのあこがれ」
様々な理由で神聖視され誕生する聖地。超自然な景観、宗祖に所縁の場所、奇跡や伝説の舞台などは、多くの信仰と信者を生み出しました。聖地に参拝することは、信者にとって特別な行為であり、信者を誘うため、案内本や霊験譚が発信されるとともに、絵画や日記など聖地巡礼の記憶や記録が残されていきました。そこには、「観光」的な要素も散見され、人々の憧れを拡大していきました。
四国遍路・世界の巡礼研究センターの所蔵品をとおして、聖地の表象をひもとくことで、聖地とは何かについて考えてみます。(胡光)
(1)広がる聖地
奈良時代に修行僧が始めた修行の場所は、仏や神の宿る場所として、または宗祖に所縁の場所として聖地となり、平安時代には、貴族を中心とした高野詣や熊野詣、三十三の観音霊場を廻る西国巡礼も誕生した。巡礼の最盛期は、庶民の参加を見た江戸時代だった。一生に一度は行きたいと唄われた伊勢参りをはじめ、善光寺、宮島、金毘羅などに人々が押し寄せ、四国霊場八十八ヶ所の札所も確定した。多数の案内記が出版され、人々を聖地へと誘った。聖地が身近になると、各地にこれを写した霊場も誕生した。明治維新による危機を乗り越え、交通の発達とともに起きた巡礼の大衆化は、信仰の旅から観光の旅へという変化をもたらした。
(2)描かれた聖地
奈良時代には、大自然の中での修行が流行し、役行者が始めたという修験道では土着の神々が、山中に創建された寺院に祀られる仏の守護神となった。次第に、弘法大師のような宗祖が修行したという場所をたどる巡礼が生まれ、聖地が固定される。曼荼羅や伝記を描くことで、信仰の形を可視化していった。
(3)記録される聖地
案内記や地図を片手に聖地を巡礼した人々は、その体験を日記として記録していった。その大半は後人の旅の指標とするため、地名・距離・難所が書かれた単調なものが多いが、美しい風景や接待をする人々との交流が記されていることもあり、当時の歴史を記録する貴重な史料となる。寺社の朱印を捺した納経帳も始まり、現在の聖地と異なる姿が記録されていることもある。記録された聖地は、後人を誘い、再生産されていくのである。
(4)聖地巡礼
近年では、映画やアニメの舞台が「聖地」と呼ばれ、その地を訪れることが「聖地巡礼」とされ、新たな観光地を誕生させています。しかし、宗教や信仰に基づく厳密な意味での聖地巡礼も、その長い歴史の中で多くの変化を遂げ、観光的要素を受け入れたものでした。
二〇二〇年に顕在化した新型コロナウィルス感染症の世界的流行によって、オンライン巡礼が始まるなど聖地や巡礼の形はさらに変化しています。どんな状況においても聖地を求め、憧れる心情は健在です。本展を通して、聖地のあるべき姿とその未来に想いをはせていただければ幸いです。また、コロナ感染が終息し、気軽に様々な聖地を巡礼できるようになることを強く願います。
【主な展示資料】
役行者前鬼後鬼図、弘法大師絵伝、吉野山図、象頭山参詣道紀州加田ヨリ讃岐廻幷播磨名勝附、四国巡拝みちの記、小豆嶋佛閣八拾八箇所道案内附巡礼道具