四国から世界へ
四国遍路は古代に始まり現代まで続いている巡礼です。江戸時代に大衆化し、明治の神仏分離や戦後の混乱期をのりこえ、今では10万人とも15万人ともいわれる多くの人々が四国の札所を巡っています。
こうしたお遍路さんを支えてきたのが地域の人々です。お接待などを通して地域の人々はお遍路さんを暖かく迎えてきました。
日本には熊野詣や西国三十三ヶ所、世界にはサンチャゴ巡礼やメッカ巡礼など多くの巡礼があります。これらの巡礼と四国遍路には多くの共通点があります。
四国遍路には人々を惹きつける不思議な魅力があります。四国遍路への関心は年々高まり、いまや四国遍路は四国を代表する貴重な文化遺産となっています。
研究センターの設立
いま四国では官民あげて「四国八十八箇所霊場と遍路道」の世界遺産登録への取り組みが推進されています。また、2014年は四国霊場開創1200年としてマスコミ等でも大きくとりあげられ、2015年には新たに制定された日本遺産に四国遍路が認定されました。このように四国遍路に対する社会の関心はきわめて高いのですが、学術的な研究はあまり進んでいません。また、サンティアゴ巡礼、メッカ巡礼といった世界の巡礼との国際比較研究も十分にはなされていません。
愛媛大学では法文学部と教育学部の教員が2000年に愛媛大学「四国遍路と世界の巡礼」研究会を結成し、これまで10年以上にわたって学際的共同研究を続けてきました。毎年秋にシンポジウムや研究集会を開催し、多くの報告書・資料集や学術論文集を刊行するなど大きな成果をあげました。こうした四国遍路と世界の巡礼に関する長期にわたる研究活動・組織はほかに類例がなく、全国で唯一の研究拠点となっています。また、文科省が2014年に公表した「ミッションの再定義(人文・社会科学、学際・特定分野)」結果においても「四国遍路の歴史や特質の学際的な研究を中心とした世界の巡礼との国際比較研究」として高く評価されています。
四国遍路と世界の巡礼研究を進め、四国遍路に対する社会の関心に応えることは、地域の学術拠点であり、地域貢献を重視する愛媛大学に課せられた責務といえます。こうして2015年4月に法文学部附属四国遍路・世界の巡礼研究センターが設立されました。
さらに2019年4月から本センターは、文系教員の活動を全学的に組織化し、文系の研究力を駆使して地域創生に取り組むため、愛媛大学が社会連携推進機構に設置した文系研究センターのひとつとして、新たなスタートを切りました。
研究センターの目的
愛媛大学 四国遍路・世界の巡礼研究センターは、四国遍路の歴史や現代の実態を解明するとともに国際比較研究を行うことを目的とします。具体的には、①四国遍路の古代から現代までの歴史的諸相を学際的に解明すること、②多様化しつつある現代遍路の実態を明らかにし、地域の活性化に向けての方策を探ること、③世界の巡礼との国際比較研究を行い、四国遍路の国際的特質を解明することを目的とします。そして、その研究成果を世界に向けて発信していきます。
また、本センターでは、歴史学、文学、社会学、法律学、経済学、観光学などさまざまな分野の教員が結集し、四国遍路と世界の巡礼の学際的研究を進めるとともに、その成果を「歩き遍路」授業などの教育に生かします。さらに、研究の成果を社会に還元し、四国遍路の世界遺産登録など地域貢献にもつとめていきます。
研究センターの組織
国内研究部門
四国遍路の始まりはいつなのか、なぜ札所の数は八十八なのかなど、四国遍路の歴史には多くの謎が残されています。また、現代のお遍路さんの目的は多様化し、外国人遍路の数も増えています。国内研究部門では、四国遍路の古代から現代までの歴史的諸相を学際的に解明し(歴史文化研究班)、また現代遍路の実態と地域発展の方策をフィールド調査などを通して具体的に明らかにします(現代社会研究班)。
国際研究部門
サンティアゴ巡礼、メッカ巡礼、五台山巡礼など世界各地には数多くの巡礼があります。地域、民族、宗教は違っていても、多くの人々が聖地を目指して巡礼の旅をしています。国際研究部門では、世界各地の巡礼の歴史や現在の諸様相を明らかにし、あわせて四国遍路と世界の巡礼との国際比較を行います。
国内研究部門
〈歴史文化研究班〉
胡光 | 法文学部(日本史)・センター長 |
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寺内浩 | 愛媛大学名誉教授(日本史) |
中川未来 | 法文学部(日本史) |
西耕生 | 法文学部(日本文学)・副センター長 |
神楽岡幼子 | 法文学部(日本文学) |
田中尚子 | 法文学部(日本文学) |
青木亮人 | 教育学部(日本文学) |
川岡勉 | 愛媛大学名誉教授(日本史) |
内田九州男 | 愛媛大学名誉教授(日本史) |
〈現代社会研究班〉
竹川郁雄 | 愛媛大学名誉教授(社会学) |
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野崎賢也 | 法文学部(社会学) |
井口梓 | 社会共創学部(観光文化論) |
竹内康博 | 愛媛大学名誉教授(民法) |
兼子純 | 法文学部(地理学) |
石黒聡士 | 法文学部(地理学) |
国際研究部門
高橋弘臣 | 法文学部(アジア史)・副センター長 |
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水野卓 | 法文学部(アジア史) |
菅谷成子 | 愛媛大学名誉教授(東南アジア史) |
齊藤貴弘 | 法文学部(西洋史) |
中根隆行 | 法文学部(比較文学) |
加藤好文 | 愛媛大学名誉教授(英米文化) |
山川廣司 | 愛媛大学名誉教授(西洋史) |
吉田正広 | 愛媛大学名誉教授(西洋史) |
田島篤史 | 法文学部(ドイツ文化) |
(2022年4月1日現在)