愛媛大学ミュージアムで「仏たちの世界展」が始まりましたが、現在は休館中です【展示は4月9日(土)まで】
最新の研究成果とセンター所蔵の貴重な資料を公開するために10月24日に展示を行いましたが、コロナ禍のため、愛媛大学ミュージアムは閉館中です。展示の内容をオンラインでご覧いただけるように準備をしていますので、しばらくお待ちください。
展示1「研究最前線」
・現代のお遍路さんの信仰心(竹川郁雄)
・四国遍路巡拝記の空間的特性を探る(井口梓・渡邉洋心)
・四国遍路と感染症―19世紀末のコレラ流行の事例から(中川未来)
・四国遍路の世界遺産化に向けた取り組み(胡光)
展示2「仏たちの世界」
四国で生まれ、修行をし、悟りを開いた空海は、唐へ渡り、密教を日本に伝えました。密教の世界観を描いた両界曼荼羅は、空海によって初めて唐から日本に伝えられ、仏教を一般化するうえで大きな役割を果たしています。大日如来を中心とする両界曼荼羅には、多数の仏たちが描かれています。江戸時代には、四国を曼荼羅に例え、四国遍路へ誘う案内図も現れます。
仏には、真理を得て悟りを開いた「如来」、悟りを求める「菩薩」、悪魔を降伏させる「明王」、仏教に帰依した神々「天」があります。描かれた仏たちの姿を見ることで、人々の信仰の歴史を読み解いてみましょう。
(1)神々と結びつく仏たち ―神仏習合―
仏教が日本に伝来したのは、『日本書紀』などによると六世紀半ばである。奈良時代になると、大自然の中での修行が流行し、役行者が始めたという修験道では土着の神々と仏の習合が進んだ。神は、山中に創建された寺院に祀られる仏の守護神となる。このような思想は、本地である仏が人々を救うために神の姿をとって現れる(垂迹する)という本地垂迹説を生み出した。
(2)請来された仏たち ―曼荼羅と明王―
曼荼羅とは、密教で宇宙の真理を表すために、仏を体系的に配列し たものである。大同元年(806)唐から日本へ、空海がもたらした両界曼荼羅は、『大日経』を原典とする胎蔵界曼荼羅、『金剛頂経』による金剛界曼荼羅からなる。また空海は、不動明王をはじめとする五大明王など新たな仏たちを伝え、後に人々の篤い信仰を集めた。
(3)弘法大師信仰と仏たち ―四国遍路の誕生―
空海が修行した四国は、平安時代になると「辺地修行」の場所として、多くの修行僧が訪れた。四国には、阿弥陀如来や薬師如来、観音菩薩への信仰や熊野・白山への信仰が混在していた。鎌倉時代になると、弘法大師が修行したという遺跡を巡るようになり、江戸時代が始まる頃には、八十八の札所が確定し、四国遍路が誕生する。江戸時代の札所には、神社も含まれ、様々な本尊が存在する。江戸時代半ばから明治時代にかけて、弘法大師を祀る大師堂が建立され、本堂と大師堂を礼拝する四国遍路が完成した。
(4)パンデミックと仏たち
2020年に顕在化した新型コロナウィルス感染症の世界的流行によって、札所が一時閉鎖されるなど四国遍路も大きな影響を受けています。外国人遍路や団体客は激減しましたが、ひとり一人の遍路は健在で、家族の供養や家内安全、そして平穏な社会が来ることを祈りながら旅をしています。現在の社会では、コロナ禍のために、人と人との関係が疎遠になっています。四国遍路と世界の巡礼における歴史や文化の研究では、自然や人との関わりを見つめなおすことができると考えられます。本展を通して、あるべき社会や人間の姿を思い出していただき、またコロナが終息することを強く願います。
<主な展示資料>
・日吉山王垂迹神曼荼羅図 江戸時代
・石鈇山曼荼羅図 江戸~明治時代
・五大明王図 室町時代
・両界曼荼羅図 江戸時代
・愛染明王図 明治時代
・真言十三仏弘法大師図 江戸時代
・天下泰平四国八十八ヶ所御本尊五穀成就図 明治6年(1873)頃